中東などでの政情不安
1990年の湾岸戦争以降、それなりに安定していた中東の政治地図が2003年3月に始まったイラク戦争により大きく書き換えられました。
フセイン政権崩壊後のイラク国内は、米国の戦後処理の不手際と宗派対立により大混乱に陥りました。
その混乱の収まらない2005年には、隣国イランで保守強硬派の大統領が誕生し、米国やイスラエルへの敵意を明らかにしました。その後、イラクでは少しずつ民主化プロセスが進行し現在は小康状態に見えますが、これらの経緯で、米国は中東での威信の低下を招いたように思います。
非米国圏の台頭も商品価格に影響を与えています。特に資源外交を展開しているロシア、非民主主義国と積極的に外交を展開している中国でしょう。米国を中心とした秩序が崩れ、力による資源争奪戦に突入していることで、商品価格に上昇圧力がかかっていると考えます。
需給の逼迫による認識の変化
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需給の逼迫予測と供給不安は、人々の「商品」に対する認識を大きく変えました。
以前は商品を、日本の「水」のようにほとんどただで手に入れることができました。価格決定の主導権は消費者側にあり、生産者側は「生産コストさえ払えればよい」と考えたため、長い間資源価格は横ばいを続けていました。それが需給の逼迫によって、生産者側に主導権が移りました。
「水道水」であった商品は、需要と供給で値段が決まる「ミネラルウォーター」になってしまいました。今後の商品の値段は、「需要と供給」に決定されます。必需品であればあるほど値段は上がり、家計に占める割合が増加していきます。
相次いだ大型ハリケーンなどの気象変動
商品の代表である原油の取引は、WTIというテキサス積み出しの原油を基準に取引されることが多いです。ここ数年発生した大型ハリケーンは、米国メキシコ湾岸の石油精製施設に影響を与えたため、ハリケーンが発生接近するたびに原油の取引価格が大きく変動しました。
このように、メキシコ湾岸のハリケーンが原油に、オーストラリアの旱魃が小麦に、という具合に、気候変動が商品価格に影響を与えてきました。需給が逼迫している中、異常気象が今後増加するとすれば、それは大きな商品価格への上昇圧力になります。
リターンの出ない「株、債券、米ドル」の代替
2001年、FRBはITバブルの崩壊と景気の低迷、そして9月11日のテロに対応するために大幅な利下げを行いました。大幅な利下げは米国の景気を下支えしましたが、一方で「米ドル資産投資のリターン低下とドル安」という副作用ももたらしました。
米ドル資産投資は歴史的に5%以上のリターンを提供しており、投資家は5%〜10%のリターンを期待しているはずなのですが、そのリターンが得られなくなってしまったのです。米ドル資産に投資していた米国外の投資家や米国の年金基金の立場になって考えると、彼らの苦悩が分かります。株を買っても債券を買っても年間7%あるいは8%という彼らの要求利回りを満たされません。そのため、必然的に直近のリターンの高い商品などのセクターへの資金配分を増やしていると考えられます。
物価上昇と戦う中小企業FX
現在、世界中で物価が上昇しています。石油、石炭、鉄鉱石などの鉱物資源や小麦、大豆など食料品の値上がりが加速しています。その影響で、中国をはじめとするアジア諸国では5%以上、欧米諸国では3%〜5%消費者物価が上昇しているのに対し、日本の消費者物価の上昇率は1%以下と世界の中で極端に低くなっています。いったい何が起きているのでしょうか?
何も日本だけ特殊な物価維持政策がとられているわけではありません。実際に日本でも物価は著しく上昇しています。ただしこれは企業向け物価の話で、石油や鉄鉱石など原材料は年率20%、石油製品や鉄材などの中間財は年率5%程度値上がりを続けています。
値上げを転嫁できず値上がり分は自己負担
仕入れ値が上昇する中、皆ボランティアで値上がり分を小売価格に転嫁しなかったわけではありません。団塊の世代の引退や非正規雇用の増加などの要因で消費者の購買力が弱まったこと、そしてバブル崩壊後10年以上大きな物価の上昇がなく、「物価の上昇」に対する消費者の心理的な壁が高かったことなどの要因により、だれも小売価格を上げることができなかったのです。 FX
原材料費や中間財の値上げ分は「企業努力」という形で企業の自己負担になってきました。「企業努力」といっても魔法があるわけではなく、人件費、管理費など、「乾いた雑巾を絞る」ような徹底したコストの削減が行うことで、原材料の値上げ分を吸収してきたのです。
中小企業ほど値上げできず
値上げ分を小売価格に転嫁できるかどうかは、一重にその会社の価格支配力に拠ります。
大手スーパーマーケットに豆腐を納入している小規模豆腐業者が、原料である大豆価格の上昇分をスーパーへの卸売り価格に転嫁できるでしょうか? また小規模自動車部品メーカーが、部品の材料代の上昇分の値上げを、納入先の大手自動車会社と交渉できるでしょうか?
答えは「No」です。つまり、企業の規模が小さいほど、取り扱っている品物が汎用品であるほど、消費者との距離が近くなればなるほど値上げは難しくなり、原材料高の影響を受けてきたのです。
悪化する中小企業の業績
では今現在、日本の景気は良いのでしょうか悪いのでしょうか。
大企業だけを見れば、株価は下がっているものの、引き続き新興国の好調な需要を受けて増益基調であり、決して悪いとは言えないでしょう。中小企業の業績はどうでしょうか?
帝国データバンクと商工会議所のデータが参考になります。
増加する中小企業の倒産
帝国データバンクは負債1000万円以上の倒産を毎月集計して発表しています。
2008年4月のレポートによると、毎月の倒産件数は2005年以降一貫して上昇傾向であるのがよく分かります。また倒産の背景として、製造業の「原料高による収益性の低下」が挙げられています。
一方、倒産件数は増加する一方で負債総額は増加していないことから、倒産の小型化が進んでいると推測できます。小さく力のない企業がコストの上昇に苦しみ、倒れていっています。
仕入価格の上昇により悪化する中小企業の景況感
商工会議所は毎月早期景気観測調査を行い、発表しています。
莫大な「投機マネー」はどこから来たか、そしてその目的とは?
21世紀に入り、世界中が「賭場」になってしまいました。お金が「リターン」を目指して株式や債券、商品などを駆け巡っています。リターンを目指して世界中を短期で移動する「投機マネー」の存在が、日本の製造業を始めいろいろな所でさまざまな影響を与えています。この「投機マネー」の生い立ちから目的、日本がどう対応すればいいかなどを考えてみましょう。
まず、世界中で数百兆円とも言われる「投機マネー」ですが、一体どこから来たのでしょうか。
資本主義の原点である「借金」FX
正常な経済活動では、お金を持つ人とその人からお金を借りる人が存在します。日本では、お金を持つ人は「家計」、お金を借りる人は「企業」と「国」で、銀行など金融機関がその仲介をしています。家計は銀行に貯金をし、銀行は企業や国に投資を行い、企業や国は給与や配当などの形で投資に還元します。
実はこの構図、同じ絵を国と国の間でも描くことができます。お金を借りているのは主に米国、お金を持つのは日本や中国などのアジア諸国、中東などの資源国です。米国はこれらの国からモノを買う代わりに、ドルベースで高い配当を提供してきました。
投機マネーの誕生「膨らむ借金と低下する期待利回り」
大きな変化が起きたのは日本では90年代後半、米国では2000年台前半です。日本では財政出動という形で、政府が家計から大きな借金を作りました。米国は好調な住宅市場などを背景に好調な内需のため、貿易赤字という形で外国からの借金を膨らませました。
借金が膨らんだということは、その裏返しで貯金も大きくなります。アジア諸国の貯蓄はどんどん大きくなり、米国への投資金額も大きくなる一方、グローバル化の進展による低インフレ、インターネットによる情報の効率化などにより、投資の期待利回りは低下し、収益機会は減少しました。
投資の期待利回りの低下に失望したお金は、より高い利回りと収益機会を求め、「投機マネー」となり世界中に散らばって行きました。
投機マネーの影響
タイトルにも書いたように、筆者は「投機マネーはいい影響よりも悪影響の方が大きい」と考えています。「投資」と「投機」の違いを踏まえつつ理由を述べて行きましょう。
目的は短い投資期間で高いリターン
年金の運用では、数十年の期間で「投資」が行われます。複数の投資対象に資産を配分し、長期保有することでその投資先の経済全体の成長をリターンとして享受するのを目的とします。
一方、投機資金は3〜5年を運用期間の目安とし、期間が短く成果が大きいほど高くなる、IRR(内部投資収益)の最大化を目的とします。目的がIRRの最大化であり投資期間が短いため、「投機の機会を見つけてお金を入れ、収益が上がるとお金を引き出す」という行動パターンになります。人材の育成や技術の蓄積、研究開発など、モノ作りに必要な要素が考慮に入る余地はありません。世界や社会の秩序を乱しても、高いリターンを得ることが目的となります。
投機は「安く買って高く売る」、投資は「育てる」「開発する」という言葉が当てはまると思います。「育てる」「開発する」こと無しに、本源的な収益は産まれません。本源的な収益を産まない投機マネーが利益を上げているということは、逆に投機マネーにより損をしている人がいることを覚えておく必要があります。
拝金主義
日本国民は世界でも類を見ない「拝金主義」否定国民です。株式投資はギャンブルと同等にみなされ、事業に成功しても「成金」は決して尊敬されず、「お金」は汚いものとまで言われています。そんな中、投機マネーは不動産や株価などを通じて日本経済や人々の生活を、ニュースなどで人々の心を揺さぶります。よく「金融立国」という言葉を耳にしますが、これは「拝金主義」と非常に近いものなのではないでしょうか。「拝金主義」の国では地道に努力することに価値を見出されないため、製造業は育ちません。
グローバルな投資基準の押し付け
英ファンドTCIとJパワーの問題、日本の総合電機メーカーの経営問題、村上ファンドの問題、スティールパートナーズの戦略、すべて株価または経営の不均衡が原因です。投機マネーはその不均衡をついて、高いリターンを獲得するためにやってきました。ただし不均衡というは、「米国経営基準を持つ株主」という物差しから見た場合の不均衡であり、本当に不均衡かどうかは分かりません。米国経営基準はモノ作りに適していないという問題と共に、現経営は少なくとも日本で何十年も行われてきた経営方法であり、歴史的な日本の価値観からすれば合理的な場合が多いのかもしれません。
流動性の乏しい市場への資金の流入FX
今までは資産運用の対象となっていなかった市場へ、大量の投機マネーが流れ込んでいます。エマージング諸国、不動産、プライベートエクイティから、銅やプラチナなどの貴金属、小麦や大豆などの食料までもが今や投機の対象となっています。元々市場規模や流動性に問題があり運用の対象となっていなかった市場が多く、そこに大量の投機資金が流れ込むことで、食料や原油価格の高騰といった問題を引き起こしています。
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